ゴールデンウィークに観た映画のまとめその1『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』『アルゴ』
今年のゴールデンウィークは幸運なことに10連休でした。先日投稿した作品以外にもいくつかの映画を観たので、感想をまとめます。今回はまず『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』『アルゴ』の2作品の感想です。
以下映画の内容に触れるため、ネタバレしています。ご注意ください。
『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』(原題:The Eichmann Show)2016年4月29日(金)テアトル梅田 劇場①にて鑑賞しました。
映画を観に行ったきっかけはマーティン・フリーマンが出ているから、だったのですが、想像以上によかったです。話の進んでいくスピードがちょうどよくて、観易い映画でした。
個人的には、重大な出来事を番組(や映画)にするときに事実が歪められてしまうことや必要以上にエンタメ化すること、そこで誤解が生じることが危険であると感じるのですが、この映画の中では「アイヒマン・ショーを撮った人たち」自身からも同様の葛藤が読み取れたのでよかったです。視聴率を争う相手がガガーリンなんだもんなあ…視聴者を引きつけながら事実を写した番組を撮る、そんな誇り高い仕事の様子が見られました。
そしてなにより、アイヒマンの人間らしい部分を撮ろうとこだわるレオに大きく共感できたことが、この映画を気に入った大きな理由のひとつです。アウシュビッツの暴力はなにか巨大な作用が働いた通常ありえないものではなくて、だれもが備えている危険な部分、暴力性が発達した結果であり、だれもがアイヒマンになりうる、とわたしも思っているので。アウシュビッツという歴史やその暴力性を神話化しないことこそがそうしたものに対する抵抗であると思います。
『アルゴ』(原題:ARGO)2016年5月4日(水)、自宅にてDVDで鑑賞です。
レンタルビデオ店で頻繁に目にしてはいたのですが、ジャケット写真のベン・アフレックがあまりにも切羽詰まった表情なので「シリアスすぎるのはちょっと…」と思い避けていました。しかし『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』以来、じわじわとベンアフブームが来ていたのでついに。
映画を観ていちばんの感想は、「なんかくやしい」です。
ベン・アフレックが自分を主演に監督を務めて撮った、って正直、自己満足のための映画だろうと思っていたのです。それが想像以上におもしろかった。彼にこんなに くすくす、はらはらさせられたのだと思うと、ベンアフセンスいいな、なんだかくやしいな、と思いました。隣で観ていた母親は毛むくじゃらのベンアフを見て「この人すごくかっこいい」と言っていたので、こんなに面白い映画を撮って、アカデミー賞を取って、観客に自分をイケメンだと認識させるんだから、ベンアフはすごい人なのだなあと思いました。
恥ずかしながら、DVDの再生をはじめるまでは映画の内容を知らないどころか、こうした史実があったことも知りませんでした。しかし、状況は映画の中ですべて説明されるため置いてけぼりをくらうことはありません。むしろ政治的な内容はほとんど冒頭にまとめられています。想像していたようなシリアス一辺倒ではなく、コメディの要素とのバランスがちょうどよい作品でした。
そのぶんかなり脚色されているでしょうし、事実と異なる部分が多いとの抗議もあったようですね。先に書いたとおり「事実が歪められてしまうことや必要以上にエンタメ化すること、そこで誤解が生じること」はありますから。母親は「アメリカが撮っているんだから作戦成功したに決まってるし、アメリカが善いものとして描かれるに決まってるでしょ」と言っていました。こういうのって国際問題に発展しかねませんし、ほんとに難しいだろうなあ。歴史の勉強というよりは、フィクションのつもりで観るほうがこの映画の正しい楽しみ方であると思いました。ポスターの "THE MOVIE WAS FAKE. THE MISSION WAS REAL." うまいです。